「食 × 光」展

ギャラリー碧では4月18日(木)より「食 × 光」展を開催いたします。
参加作家はギャラリー碧の企画展初登場となる町田帆実、小野有美子です。
食事をするかのように作品を制作する町田と日常風景の一部に視点を置き光を当てる小野。
新進気鋭の両作家の作品を是非ご高覧ください。

会期 4月18日(木) – 5月21日(火)
時間 10:00 – 18:00
定休日 水曜
参加作家 町田帆実 小野有美子

小野有美子、Water Side、Oil on canvas、162x162cm

小野有美子 Yumiko Ono プロフィール
1987年 福島県生まれ
フランス・パリ在住
2010 武蔵野美術大学 造形学部 油絵学科 油絵専攻 卒業
2012 武蔵野美術大学大学院 造形研究科 美術専攻油絵コース 修了

展覧会
【主な個展】
2014  「小野有美子 個展」 櫻木画廊(東京)
2015  「街を流れる川」 Niche Gallery(東京)
2017  「Open Studio」 Cité Internationale des Arts(パリ / フランス)
2019  「Moment」 Niche Gallery(東京)
      「渡り渡る息」 風花画廊(福島市 / 福島)
2022  「景」 風花画廊(福島市 / 福島)
            「視線の先」サント=クロワ旧修道院 ( サント=クロワ / フランス )
2022-23 個展    在リヨン日本領事館 ( リヨン / フランス)
2024  「様々」西会津国際芸術村 ( 西会津町 / 福島)

【主なグループ展】
2013  「 第 1 回 損保ジャパン美術賞展 FACE2013」損保ジャパン東郷青児美術館(東京)
    「 第 22 回 ARTBOX大賞展 受賞記念展」世界堂新宿本店(東京)
2014  ホルベイン スカラシップ選抜展 VOL.2「 2014 春 ~布石~」REIJINSHA GALLERY (東京)
    「第32 回 明日をひらく絵画 上野の森美術館大賞展」上野の森美術館(東京)
    「 FACE 展 2013-2014 選抜作家小品展 VOL.1 」REIJINSHA GALLERY(東京)
2015  「 清須市 第 8 回 はるひ絵画トリエンナーレ」清須市はるひ美術館(愛知)
2019  「Festival Les traversées du Marais 河合 真里 & 小野 有美子二人展」シテ・インターナショナル・デ・ザール (パリ)
    「 The Winter’s Tale 」村越画廊(東京)
2022      「 第8回 リヨン・アート・ペーパー 2022」パレ・ド・ボンディー(リヨン、フランス)
     「 吉野石膏美術振興財団 在外研修助成採択者成果発表展 YOSHINO ART CONNECT 」スパイラルガーデン(東京)
「 小野有美子・野中美里 2人展」村越画廊 (東京)
2023      「 – 白磁 × 絵画 – 」風花画廊 (福島)
2024   Xmas Art Festa「聖夜の女子会2023 武蔵美<ムサビーズ>の巻」 村越画廊 (東京)

​【受賞等】
2010  「平成21年度 武蔵野美術大学 卒業・修了制作展」 卒業制作 研究室賞
2012  「平成23年度 武蔵野美術大学 卒業・修了制作展」   修了制作優秀賞
      第22回ARTBOX大賞展 準グランプリ
2015  「清須市 第8回 はるひ絵画トリエンナーレ」佳作

【助成】
2012年       第27回 ホルベイン・スカラシップ奨学生
2016年  2016年度武蔵野美術大学パリ賞
2016年  公益財団法人野村財団 2016年度上期芸術文化助成
2017年  平成28年度 公益財団法人吉野石膏美術財団 若手美術家の在外研修に対する助成

【アーティストインレジデンス】
2016 – 2017  シテ・インターナショナル・デザール (パリ/フランス)
2019、2020  メゾン・ヴェルト、マルネ=シュル=セーヌ植物園(フランス)
2021      オテル・シュヴィロン、グレ=シュル=ロワン(フランス)

ホームページ
https://www.yumikoono.net/

町田帆実 Homi Machida プロフィール
1994年 愛知県生まれ 
2019年 多摩美術大学大学院 美術研究科博士前期課程絵画専攻油画領域 修了

受賞歴
2020年 FACE 2021 優秀賞
2018年 TURNER AWARD 2017 未来賞
2017年 シェル美術賞 グランプリ

主な展覧会
2022年「絵画のゆくえ」SOMPO美術館, 東京
2019年「Future Artist Tokyo 2019」サテライトイベント, 住友不動産六本木グランドタワー駅前広場, 東京
2018年「TAMA VIVANT II 2018Dissémination—散種」多摩美術大学アートテークギャラリー, 東京

Instagram
https://www.instagram.com/machida_homi/


菊地匠「from A」

この度ギャラリー碧では菊地匠の4回目の個展を開催いたします。
1991年栃木県足利市生まれ。2015年東京芸術大学美術学部日本画専攻卒業。2017年同大学大学院美術研究科芸術学専攻修了。現在は東京、足利にて制作。

菊地匠のワイプオフをはじめとする自身の関与を抑える手法が、本展では空白の作成へと向かった。

新作であるカラバッジオ『聖マタイと天使』、マネ『オランピア』のオマージュ作品を原作と見比べると、元の対象物が大胆に切り取られていることが分かる。その手法は削除や切り抜きといったデジタル処理の技術を彷彿させる。そしてキャンバスに広がる余白からはデザイン制作に使用されるアプリケーションの『アートボード』のような空間が想起される。アートボードは絵画における支持体とはまるで別物で、そこで構成されたオブジェクトは何度でも簡単に「なかったこと」にできる。また、菊地のそれはもの派における空白とも違い、素材や自然に回帰することを許さない。

“深淵をのぞく時、深淵もまたこちらをのぞいている” 哲学者ニーチェのいう深淵のごとく、菊地の空白は自己の不在を究極に押し進めたものといえるかもしれない。

ここから見えてくるものはなにか。本展の詩作で菊地が指摘する顔と絵画の「類似性」にその一端が現れる。菊地は前個展『In platea』刊行誌の中で絵画における自律性をマネの画中に認めた。19世紀パリを舞台に、虚ろな表情の人物を描き続けた大作家の作品から都市に自由が浸透する一方、人々が自らの生を自ら受け止めざるを得なくなった背景を読み解いた。つまり、絵画が不可逆的(元に戻らない、一方的)な性質を帯びることを挙げたわけだが、顔という器官もまたそれを強く示唆すると菊地はいう。

20世紀フランスの哲学者エマニュエル・レヴィナスによれば、顔は地位や属性、服の着こなしといった社会性をまとうことなく人の本質をありありと表現する。つまり顔は顔であるだけで意味があるという。

曖昧な表情とは主題を持たない人の本質を表しているともいえ、不可逆的な存在とはまさに人の生そのものといえる。ではこうした生を菊地は自作でどう表現したか。

詩作には花や天使、巨人であるアトラスが人知れず佇む様子が読まれる。世界と自身とを隔てる煉獄のような空白、そこで露わになる現実への強い衝動や生への渇望。それらが行き場もなく永遠に彷徨うものとして描かれる。ここにこそ菊地の真骨頂が見て取れるのではないか。

神なき時代、それは過剰で痛々しい現実を媒介せずには生を実感できない時代ともいえる。であるならば菊地のように遠く生の鼓動を聞きながら、日常に転がる会話や記憶の断片を拾い集め、記録する行為を今、尊く想う。

会期 4月28日‐5月10日
定休日 5月4日
時間 10:00-18:00